ネパールの移住問題とサルタックの活動

私の故郷の国ネパール。2003年の人間開発指数では世界で143位。ネパールに住む5人に2人は絶対貧困線以下の暮らしをしており農村部で特に深刻です。失業率と不完全雇用率は17.4%、32.3%と高く、よりよい生活を求めて国内外に移住する人たちがたくさんいます。

 

私もその中の一人でした。生まれ育った故郷はスンザリ郡のバラハクシェトラというところで田舎ですが、とっても美しいところです。青々とした畑や手付かずの森は私たちの宝でした。そこで生活をするだけには十分でしたが、それ以上の質の高い教育、テクノロジーやそのほかの現代的な産物にアクセスすることは難しかったのです。教育に関して言えば、学校などの教育施設の数は増加するものの、質は問題視されていませんでした。そういった環境から抜け出すべく、私は故郷を離れ首都カトマンズに移住しました。その後の首都での生活は故郷のものとは異なり、ついていくのがやっとでした。都市の雑踏、喧騒、路上のゴミはカトマンズの印象を非常に悪いものにしました。しかしそれにもかかわらず生活は故郷のものより豊かでした。移住したり移住を考えているネパールの人々は以上のような私と同じような経験があると思います。

 

都市部の公立学校にはほとんどがカトマンズの外から移住してきた子どもたちが通っています。彼らの生活は非常に苦しく、親たちの多くは日雇い労働に従事しています。学校では適切なケアや指導を受けていないと言われています。親が働いている間、子どもたちはどこへも行く場所がありません。家にいると家主からうるさがられてしまうため、他の子どもたちと一緒に外をぶらつきます。こういった子ども集団は他の集団をまねて悪さをすることがあり成長してから犯罪に手を染めてしまう例もあります。物乞いをしながら外をあてもなくぶらついている子どもたちを多く目にしました。彼らの親は、子どもたちは学校外の時間にどこも行く場所がなく、誰も世話をしてくれる人がいないと話していました。

 

サルタックの活動はこの路上で歩き回っている子どもたちの数を減らすのにつながっているのではないかと感じています。サルタックの活動は授業の前後の時間を使い、想像力を広げ、純粋に楽しんでもらえるような児童中心主義的な学習環境を提供しています。

 

私はサルタックに携わってから2年が経ちましたが、一番心に残っているのは満面の笑みでサルタックの活動に参加している子どもたちの姿でした。こういった子どもたちの多くは道で会うと、お金でなくて、物語本や読み聞かせ、ゲームを求めるようになっていきています。サルタックの都市部での活動はネパールの様々な場所からやってくる子どもたちの生活に直結するものであって、この小さな活動の一つ一つが彼らの将来を変える力になると信じています。いつか農村部から移住した子どもたち全てがお金ではなくて本を求める日が来ることを願っています。